2008年05月10日

ヴァザーリが描く アーティスト

ヴァザーリの描くアーティスト達は、まるで現代に生きているかのよう。
読者が16世紀を感じる本。


14世紀から16世紀のフローレンスやローマでの人間関係は、現代の人間関係とそう変わらないんじゃないか、と思わせるほど複雑な上下関係、嫉妬、我が儘、ライバル意識 etc...があり、そんな渦中に、今では天才と言われている芸術家達が生きていた。

天才の考えていることは、同年代では理解者が少なく、受け入れられず、後々、特に亡くなってから評価される場合が多い。名前が売れている人、実力よりも口のうまい人の方が給料が高く、実際に才能のある人が安く見られがち。。結果を出すまで、名前が売れている人に美味しいとこ取りをされてしまうのを、なんとか回避しようとする努力。だって、できあがるまでに何年、時に、10年以上かかるのは当時では普通。結果を出すまで、アイデアを上に横取りされてはたまらないわよね。。
「難しい」を言い訳に、費用を流用し、さっぱり完成させない、口のうまいだけの指揮者を、なんとか退かせようと策をあれこれ講ずる15、16世紀の芸術家の努力。

本来、そんなことにエネルギーを使わず、もっと作品に没頭できたなら、もっと素晴らしい作品が後世に残ったであろう、と同情してしまう。

例えば、
▼ ブルネレスキ ▼ 

Cathedral-of-Florence.jpgブルネレスキによるフィレンツェのドーム。
ブルネレスキが思ったように工程が進むまでに時間がかかっている。ブルネレスキは非常に苦労している。
最終的には、彼が全面指導をとることができたのだけど、それまでが大変。
できないことを自分はやってみせるということを示すのに、コロンブスが卵を立てたことは有名。でも、実は、先にブルネレスキがそのパフォーマンスをしている。
(コロンブスがフィレンツェ人と何らかの関連があり、そのパフォーマンスを知った、と想定できる。)

ブルネレスキが、昼休みに食事のために降りなければならない大工達の、その時間のロスを減らすために簡易食堂を作業場に設置した、なんて、読んでいて楽しい。何を食べたんだろう?! 眺めも良かっただろう!

このドームや他の建築が有名で、建築家と思われがちだが、ブルネレスキの3D作品(*)もエネルギッシュで、情感的で素晴らしい。



▼ ラファエロ ▼ 

Raphael-SchoolofAthens.jpg

ラファエロは画家として有名だが、実は素晴らしい建築家でもある。
女性への関心が残されていない、ダ ヴィンチ、ミケランジェロなどと対照的に、好きな女性とうまくいかないと仕事が手に付かなかったラファエロ。
ラファエロの弟子については次回。

Uccello-wireframe.png▼ ウッチェロ ▼ 

結婚はしても、作品造りに没頭した芸術家は多い。
遠近法に没頭し、徹夜もしょっちゅうしていたウッチェロ。
妻がウッチェロをベッドに誘ったら、「あぁ、この遠近法は、なんて愛らしいんだ!」って。

遠近法が愛人と、ヴァザーリが茶化しているよう。
というのも、自然を観察するより、遠近法にとらわれすぎたために、乗馬像(騎手像)の馬の歩行の間違いに、ウッチェロが気付かなかったから。




▼ ミケランジェロ ▼ 

優れた芸術家へのヴァザーリの尊敬、同情、共感が生き生きと表現され、例えば、ヴァザーリが最も尊敬したミケランジェロの項は、「いやぁ、本当にミケランジェロが大好きだったのねぇ。。」としみじみ感じてしまうほど、親しみ、尊敬、愛情が伝わってくる。

Michelangelo-Davids.jpg2D、3D、空間アートに長けていた、まるで作品を創るために生まれてきた芸術家。89歳まで現役で仕事をし、質素で、人生の後半はお給料をもらうのを拒み、作品の完成度に全力を注いだミケランジェロ。

ーー システィーナ礼拝堂の壁画 ーー

壁画経験がなかったミケランジェロ。ミケランジェロへの教皇の寵愛を嫉妬した、同世代の芸術家に ‘はめられた’ 感のある システィーナ礼拝堂の壁画の仕事。同世代の焼きもちを焼いた芸術家が、教皇をそそのかしたのよね。。だから、ミケランジェロが拒めば拒むほど、教皇はやらせてみたくてたまらなくなった。全然、教皇が諦めず、説得するから、結局、ミケランジェロは引き受ける。

ミケランジェロにしてみたら、経験者として見本を見せた全員(足場も壁画も)が全然お話にならなくて、(大変だったのよね。。ミケランジェロ。)がっかりし、全員を閉め出し、礼拝堂のドアの中、一人で黙々と作業に没頭。作業中、作品がどう進んでいるのか誰も知らないから、外部者、特に、教皇はもう我慢ができなくって、見たくて見たくて仕方がない。ヴァザーリの描写からは、そんな「いてもらってもいられない教皇」が目に浮かぶ。

途中、冬に、漆喰が早く乾燥せず、ポツポツが表面から浮いてきて、ミケランジェロが落ち込んじゃうヴァザーリの描写には、もう私までハラハラして仕方がない。すっかり、ミケランジェロに同情してしまう。

GiorgioVasari.jpgヴァザーリ Lives of the Artists (Volume I) をお薦め。固く直訳するなら、芸術家の伝記集。日本語訳も出ているはず。日本で英語版が安く手に入ります。
(ブログ、前日の「教科書」参照。)
元々のイタリア語Le Vite も、英語のLivesも、lively で vital の意味を含んだ単語。
まさに、生き生きとしたヴァザーリの表現。




そう! ミケランジェロは、最も優秀な建築家の一人。
あのサン・ピエトロ大聖堂のドームをデザインしたのは、ミケランジェロ。
79歳でも、若手よりも実力のあったその建築家は、またもや、同時代の妬みに合い、「もうろく爺さんは早く引退すべき。」と言われちゃったり。。若手からすれば、自分たちの活躍の場を確保するのに真剣だったのかもしれないけど、ミケランジェロの手紙を読むと、全然もうろくが感じられない。それまでの、功績があるにもかかわらず、ミケランジェロが可哀想になる。
ミケランジェロを心底大好きで尊敬していたヴァザーリは何か自分にできないかって、いろいろ考えて行動する。

あぁ! ヴァザーリ! 


* 3D作品 ー> sculpture (スカルプチャー)
一般的に彫刻と訳されているが、sculptureは、大理石などを彫るだけではなく、型に流し込まれて造られた作品、平面ではなく立体の作品全てを含む。「彫刻鋳造物」?!的な意味。
現在では、立体作品は全てsculptureと呼ばれている。ブルネレスキは、銅や木を使った作品が有名。 
posted by mandelin-coffee at 11:42| Comment(0) | TrackBack(0) | ART 美術 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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